為替の影響だけじゃない!? この3年で著しく値上がりしたクルマTOP5
2024.09.18 デイリーコラム3年前は安かった……
テレビのニュースをつければ「値上げ!」とか「物価高騰」というフレーズを聞かない日はない昨今、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
突然ですが、パスタはお好きですか? 2021年7月にスーパーにおける全国平均価格が521円だったパスタ1kgの価格は、2024年7月は647円なんですってよ、奥さま(総務省統計局の小売物価統計調査より)。
背景にあるのは円安とロシアによるウクライナ侵攻(ウクライナはパスタの原料である小麦の大産地)のダブルパンチで、3年の間に大体2割強の上昇ってとこですかね。なにやってくれちゃってんのよ、ロシア。
というわけで、本日のテーマは値上げ。クルマの情報にアンテナを張りまくっている読者諸兄なら、ここ最近の新車に値上げラッシュが起こりまくっていることをご存じのことでしょう。クルマの価格はここ3年でどのくらい上がったかを可視化し、そのインパクトを見ていこうというのが本コラムの狙いでございます。
一例として現代スポーツカーのメートル原器ともいえる「マツダ・ロードスター」。最もベーシックな「S」グレードの2021年9月の価格は260万1500円でした。それが3年後の2024年9月時点では289万8500円。29万7900円も! っていうか、元の車���価格の1割以上も値上げしちゃっているじゃないですか(とはいえパスタに比べると値上げ率は低いけど)。値上げ率は11.4%ですね。
まあ2024年1月発売のモデルで中身が大きく進化するとともに従来はなかったセンターディスプレイをはじめとしたお金がかかりそうな装備が追加されているので「中身の伴わない値上げ」ではないですが、それにしても3年前のロードスターって安かったのね。
というわけで、このロードスターSの値上げ率11.4%を「1ロードスター」として、気になるクルマの値上げを見ていきましょう。
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100万円アップは当たり前
まずは、手軽な輸入コンパクトとして高い人気を誇る「フィアット500」(間もなく販売終了ですが)。2021年9月(以下同)に200万円ピッタリだった「1.2カルト」の最終的な価格は259万円。値上げ率はパスタどころじゃない25.9%で“2.27ロードスター”でございます。フィアット500って200万円なら「この値段ならいいか」と思うけど、260万円って言われちゃうとなんだか……(以下自粛)。ただ、フィアット500の名誉のために補足しておくと、まったく同じ仕様ではなく装備も多少増えてますけどね(クルーズコントロールとか)。
ちなみにそこへサソリの毒を注入した「アバルト595」(こちらも間もなく販売終了)になるとどうか?
高性能仕様の「コンペティツィオーネ」はかつてMTモデルで383万円。そこから幾度かの値上げを施し、マイナーチェンジで「アバルト695」へと進化した現在の価格は、480万円。25.3%アップで“2.22ロードスター”です。フィアット500と大体同じですね。このあたりが手ごろな輸入車のスタンダードってとこでしょうか。値上げ率としては、“パスタ+α”ってことで。
いっぽう輸入車の定番ブランドといえばフォルクスワーゲンですが、何を隠そう2023年に最も売れた輸入SUVは同ブランドの「Tロック」。そんなTロックはどうかといえば、かつて355万円だったベーシックグレード「TSIスタイル」が現在は458万1000円(途中でマイナーチェンジがあった)。値上げ率29%で“2.54ロードスター”とちょっと高めです。それにしても3年間で100万円のアップか。ハァ(ため息)。
立派な高額車になったジープ・ラングラー
ところで、昨今の輸入車業界かいわい(!?)をざわつかせているクルマといえば「ジープ・ラングラー」。かつて613万円だったミドルグレード「サハラ」の4気筒エンジン車は、マイナーチェンジを経た現在は839万円。200万円以上も上がった価格のパンチ力はさすが孤高のオフローダー(!?)。値上げ率も36.9%の“3.24ロードスター”となかなかのもの。というわけで、ラングラーもここ3年の間に無事に高額車の仲間入りを果たしたのでした、めでたしめでたし。
アメ車つながりで値上げ額の大きさといえば「キャデラック・エスカレード」も黙っちゃいませんよ。1520万円だった「スポーツ」はなんと1800万円へと280万円もの値上がり。ただし率は18.4%で“1.61ロードスター”にとどまっているから輸入車としては大したことはないかも。
実は現在、先進国としては世界で一人負け状態といえる円相場は、1ドルが約140円(ピーク時は160円だった!)。3年前の2021年9月ごろは110円前後だったから、アメ車の場合は仕入れ値が大体1.4倍くらいに上がっていると考えるのが自然。大幅値上げもやむを得ない状況だというのは賢明な読者諸兄にはあらためて説明するまでもないでしょうけどね。
輸入車並みに価格を引き上げた日産
でも実は、完成車輸入における為替相場の影響がない(ただし原材料面での影響はある)国産車でも大きく値上げされたクルマがあるんですよ。それは電気自動車の先駆者「日産リーフ」。499万8400円だった「リーフe+ G」は気がつけば583万4400円に。83万6000円もの上昇で、値上げ率16.7%。国産車では異例の値上げ幅です。値上げ額にもうちょっと足せば新車の「スズキ・アルト」(の最廉価グレード)が買えちゃうんですよ。
指数では“1.47ロードスター”。途中のマイナーチェンジで装備が増えているし、ベーシックグレードはここまで値上げしていないとはいえ、やはり国産車としては異例の値上げ率&値上げ額ですね。「電気自動車はつくればつくるほど安くなる」なんて言っていたのは、一体どなた?
最後に、日産つながりで「GT-R」にも触れておきましょうか。1082万8400円だったベーシックグレード「ピュアエディション」の現在の価格は1444万3000円。えっ、360万円以上も上がっている! 途中で大規模なマイナーチェンジを施して走りも進化したとはいえ……。
金額もスゴいけど、値上げ率は33.4%で“2.93ロードスター”。なんかロードスター指数にすると大したことないような気もしますが、国産車で3年の間に360万円値上げはスゴいなあ。それだけでスズキ・アルトの新車が3台も買えちゃうんですよ、奥さま。
それにしても、ここ3年ほどはクルマに関しての価格改定といえば値上げばっかり。そろそろ飽きたので、クルマ好きとしては、円高の時代がまたくることを願わずにはいられませんよね。
(文=工藤貴宏/写真=マツダ、ステランティス ジャパン、フォルクスワーゲン ジャパン、ゼネラルモーターズ ジャパン、スズキ、日産自動車/編集=藤沢 勝)
工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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