このところ、BYDが元気です。本気で日本市場を獲りにきています。毎日のように、いろんなメディアがBYDに関する記事を掲載しているので、これは一度、BYD車に乗ってみなくてはと思っていました。そんな折、BYDジャパンがプレス向けに試乗車を用意するという情報を得たので、この機会を利用してBYDの新型4ドアセダン「SEAL(シール)」に試乗してみました。ライトブルーの後輪駆動(RWD)モデルです。
ちなみに私は、最近のICE車には明るくないのですが、EV歴5年のテスラオーナーです。なので今回のインプレッションは、テスラー目線での試乗記ということになります。
試乗したのは2024年6月某日の夕方。原宿のBYD特設イベントスペースをスタートし、明治通り→首都高→竹芝桟橋→首都高→新宿区というルートを小一時間ほどドライブしました。
BYDシールの良かった点は?
まずは良かった点について、箇条書きで行きます。
ドアハンドルがせり出してくる
テスラの「モデルS」とか「モデルX」と同じような仕様です。ふだん埋まっているU字型のドアハンドルがリモコンを押すとせり出してきます。友人・知人に自慢できるポイントその1です。
タッチスクリーンが90度回転する
ポイントその2は、タッチスクリーンが縦位置と横位置を選べる点。しかも、電動でギュイ〜ンって動きます。子どもが喜びますよね。
静粛性が素晴らしい
EVはエンジンがないので、どんなクルマでもICE車に比べれば静かです。でも、シールはとりわけ静粛性に優れていると感じました。私がふだん乗っている「テスラ・モデル3ロングレンジ」と遜色ないレベルです。
居住空間が広々している
居住空間が広々している点は、モデル3よりも優れていると感じました。後でサイズを示しますが、特に後部座席はモデル3よりも明らかに足もとが広いです。
内装デザインがシックになった
同じBYDでも、コンパクトカーの「ATTO 3」なんかはちょっと内装がケバいですよね。その点、シールはより上品で全般的にシックな感じに仕立てられています。
ガラスルーフが解放感満点
ルーフのガラスが一枚もので、継ぎ目がありません。これは、開放感においてモデル3に勝ります。後部座席の人が喜びます。うらやましい。
ヘッドアップディスプレイに未来を感じる
シールに乗って驚いた点、それはスピードメーターがフロントガラスに投影されるところです。つまり、ヘッドアップディスプレイ(HUD)が標準装備。個人的にHUDは初体験でしたので、興奮しました。しかも便利です。テスラのモデル3やモデルYだと、タッチスクリーンにしかメーターがないので、スピードを確認する際に必ず視線がずれてしまいます。でも、このHUDなら視線がずれることはありません。逆に、ステアリング奥のメーターパネルは要らないじゃんって思ったのも事実です。
BYDシールの微妙だった点は?
続いて、これは微妙だなあと思った点も。
ガジェット感が今ひとつ
タッチスクリーンの操作性が今ひとつで、あまりサクサク動かせなかった。ここがちょっと残念でしたね。テスラのタッチスクリーンには、ナビ機能やオーディオ機能に加え、走行中の各種設定(ヘッドライトとか、ウインカーとか、温度調節とか、オートパイロットとか、とにかくいろいろな設定)が機能的に配列されています。シールの場合は、一部のアイコンが何のメニューを示すのか分かりにくく、操作にとまどう場面がありました。まあ、慣れが必要ですね。
カーナビのUIが見づらい
タッチスクリーンがギュイーンって回転するのは面白いんです。けど、実用面ではあんまり意味がない。ナビが縦位置、横位置で切り替えられるのは一見便利に思えますが、どっちの位置にしてもナビの地図表示がやや煩雑です。ふだん、iPhoneやAndroidで地図アプリ使い倒している人からすれば、UIが洗練されているとは感じないでしょう。
ボディーサイズが意外にデカい
これは一番意外だったポイントですが、シールはモデル3よりもデカいんです。
BYDシール:全長×全幅×全高=4800×1875×1460mm(ホイールベースは2920mm)
テスラ・モデル3:全長×全幅×全高=4720×1850×1440mm(ホイールベースは2875mm)
ね? けっこう大きいんですよ。都市部のマンションなどにお住まいの方は、車庫に入るかどうか、まず確認してください。
BYDシールに感じたことまとめ
こうやって原稿にまとめてみると、良い点のほうが勝っていますよね。しかし、テスラーが乗ったとしたら、私と同じように残念な印象を抱くと思います。それは端的に言ってしまえば、CPU、GPUなどのプロセッサーの性能とアプリケーションが結構プアーなところが要因です。そう、繰り返しますが、ガジェット感が乏しい。ガジェットじゃなくて、自動車だなあって。
でも、例えば「プリウス」あたりから乗り換えると、「へえー」ってなるかもしれません。シールの内装や操作系は、一般的な国産車(日本車)のUI、質感にけっこう近い印象です。ステアリング上に付いているボタンとか、センターコンソールにあるシフトレバーの感じとか。物理キーやPOWERスイッチもそう。国産車からだと、何の抵抗もなく、操作に戸惑うことなく乗りこなすことができるように思います。
今回の試乗では、充電は未体験。フル加速も未体験。電費とかも測っていません。1時間ほど走ってみて感じたザックリの印象です。経済性や運動性能については脇に置いた、あくまで筆者の個人的な��ンプレッション。
BYDのモデルでは、先行する「ドルフィン」やATTO 3に続き、このシールが日本市場に投入された3番目の乗用車になります。それ以外にも、大型や小型のEVバスもすでに日本の道路を走っています。いま最も勢いのあるEVメーカーのひとつだと断言できます。
ちなみに、私がBYD車で一番期待しているのは「シーガル」です。来年あたりに日本上陸のうわさもあります。価格やサイズ次第ですが、シーガルは、ガチで「日産サクラ」と勝負できるEVになるんじゃないかって思っています。シールとはまた全然違う乗り味が期待できそうで、大注目です。早く乗ってみたい。
(文=EVcafe編集長 駒井尚文 @tesla365days)